都内某繁華街、猛暑日の14時。商談を終え、猛烈な暑さの街中で五郎はひとり悩んでいた。
足りない。全く足りない。甲子園で食べたあの程度のカレーでは…。
もっと暑くてもっと熱いものを…。五郎は重度のアツさフェチになっていた。
もっと身も心も人間火力発電所のように燃えるあつさが欲しい…。
究極のアツさとはなんだろうか……。

その時、おそらく数ブロック離れた場所からであろう、パトカーと思われるサイレンの音が耳に入った。サイレン、か。ふむ。五郎の表情がぱっと
何かを思いついたように明るくなる。
最近買ったスマートフォンで地図アプリを開く。最寄りに、、、あった。五郎は全国展開しているステーキチェーン「とつぜんステーキ」に早足で入店した。
真夏日に鉄板で熱々に焼かれたステーキを頬張る。空調の効いた店内ならそれも楽しいお食事になるだろう。
だが、店内が火の海に包まれた火災の真っ只中なら？想像を超えるアツさの中、熱くて厚いステーキを頬張る自身をイメージし、
彼は身震いした。
商談のサンプルとして用意したヴィンテージのライターやオイル、ガス。さて、これらでどうやって店内を火の海にするか、、、。
思案を巡らせカウンター席でうつむく彼にお冷を持った店員が近づいてきた。