レイ・ダリオ氏の新著『How Countries Go Broke』要約:国家破綻のメカニズムと対策
第15章:国別リスク度合いの定量化
4つの大項目:政府債務、準備金、その他健全性指標、準備通貨ステータス
米国:中央政府債務が極めて大きく、流動性のある預金/準備金が少ないが、通貨は基軸通貨であり、米国の財政健全性は現在の準備通貨としてのステータスを維持できるかにかかっている
日本:政府は大きな債務を抱えているが、自国通貨建てであり、比較的大きな外貨準備を有する
第16章:米国の債務リスクと対策
短期的な債務リスクは低い
インフレ、経済成長は適度な水準
信用スプレッドは低く、実質金利は適切
民間部門の財務状態は良好
長期的な債務リスクは極めて高い
政府債務と債務返済の現状と予想
過去最高の国債新規発行と借換
大きな債務借換リスクの存在
危機感:米政府債務は引き返せない地点に近づいている
債務と債務返済の水準は、債務投資家に大きな損失を与えることなく減らせる水準を超えている
米国債・米ドル保有リスクが顕在化し、債務返済のための借入れ、金利上昇、自己強化的な債務の死のスパイラルが発生する
対策:「3%、3面の解決策」
財政赤字をGDPの3%に削減
削減は3つの財源で可能(支出削減、増税、金利引き下げ)
トップダウン方式で実行
金利引き下げの重要性
政府の赤字に最大の影響力を持つのはFRB(金利決定)
財政赤字削減と利下げは債務問題を軽減
経済成長・インフレ・税金には相殺効果があるため、政策バランスが重要
金融緩和を伴う財政引き締めは、中央政府と民間部門の不均衡是正に有効
米国と日本の現状と課題
米国:急激な利上げによりFF金利は高い水準にあり、財政再建のため、あるいは次の景気後退のためにも下げの余地がある
日本:政府・日銀の共同声明により財政・金融政策ともに拡張的だが、いずれの政策も引き締められない状況が続いている
日本の課題:財政ポピュリストが増加する中で、政府が危機感を持ち、何らかのバランスを取っているが、米国と比べると状況は相対的に悪い
今後のシナリオ:米国も日本も一歩間違えるとつらい状況に陥りかねず、米国が危機に陥ると日本も大きな被害を被る可能性がある
まとめ
米国、日本ともに政府債務問題解決には民間から政府への富の移転が不可欠であり、金利引き下げが有効な手段の一つ
米国は利下げ余地があるが、日本は政策の自由度が低い
日本は米国の状況に左右されるため、より厳しい状況に置かれている
大災害はすぐにやってくるとは限らないが、リスクが小さいうちに対処に着手すべき
個々人として考えうる対策: 不幸にして長生きしすぎた時のために、適切な資産クラスにいくらかお金を置いておくこと