
https://www.sankei.com/article/20221018-E3SEF3AO75MSBIMFDEC6WJXRAY/?662009
「カスハラ」対応、各社急ぐ 任天堂は規定に明記
顧客からの暴力や迷惑行為など「カスタマーハラスメント(カスハラ)」への対策を取る企業が増えている。任天堂は19日から、製品の修理サービス・保証規定に「カスタマーハラスメント」の項目を追加し、カスハラに認定される行為があった場合は「交換や修理を断る可能性がある」と明記した。百貨店やホテル、鉄道会社でも、社内でガイドラインをつくるなど対応を急いでいる。
任天堂の規定はカスハラを「社会通念上相当な範囲を超える行為」として「脅迫や侮辱、過剰なサービス提供の要求、SNS(交流サイト)上での誹謗(ひぼう)中傷」などを列挙。「悪質な場合は警察や弁護士に連絡し対処する」としている。担当者は「従業員も笑顔で働ける環境をつくるため規定に明記した」と話す。
厚生労働省が令和2年10月に全国の企業・団体に行った調査によると、「過去3年間に相談があった」と回答した割合は、パワハラ(48・2%)、セクハラ(29・8%)に続いてカスハラが19・5%。件数が「増加している」と答えた割合は3・8%だった。
カスハラが発生しやすいのは顧客とじかに接する職場。近鉄百貨店では「精算が遅くなり行列ができ、いらいらしたお客さまが大声を上げることもある」(広報)という。同社は昨年11月にガイドラインを策定し、悪質な要求の定義や対応手順を明記。高島屋も、顧客の行動パターン別に関連法令や対応方法などについて周知している。
関西で小売業を展開する別の企業も「扱っていない商品や限定品、完売品の用意を求める」などのカスハラ事例があるという。広報担当者は「カスハラは年々増えてきており、対応が難しい」と漏らす。
ホテル業界も、「電話口に出た従業員が女性と分かるとプライベートな連絡先を聞き出そうとする」「夜間に女性従業員を執拗(しつよう)に客室へ呼ぶ」などの被害が想定され頭を悩ませる。
このため、ホテルグランヴィア大阪(大阪市北区)では、午後10時から午前6時までのフロント業務には男性従業員のみが就くことにしている。「男性従業員が客室を訪問する際も(緊急時の連絡手段として)必ず携帯電話を持たせている」という。
「リーガロイヤルホテル」を展開するロイヤルホテルは事例を踏まえ、令和2年に全社員向けのコンプライアンス研修で初めて、テーマの一つとしてカスハラ対策を取り上げた。
一方、鉄道会社は、運行の乱れにいらだつ乗客や深夜の泥酔客らへの対処に追われる。JR西日本は「(駅員らへの)暴力行為をやめるよう求めるポスターを駅構内に掲示し、係員に対処方法の教育を実施している」と話す。
ただ、カスハラは商品やサービスの問題点を指摘する「クレーム」との違いを判別しにくい。対応を誤ると深刻なトラブルや事件にも発展しかねず、各社は現場の実情を踏まえた慎重な対応を迫られている。