
「生まれと育ち」はどちらが重要なのか。慶應義塾大学文学部の安藤寿康教授は「2016年以降、遺伝と学歴に関する研究が急速に進んでいる。最新の研究では、遺伝的なスコアが高いほど最終学歴が高くなることが分かっている。将来的には、胎児の段階で学歴がある程度まで予測できるようになる可能性もある」という――。(第1回)
■「遺伝学では個人レベルの能力はわからない」が常識だったが…
■2000年代初頭に登場した手法が病気のリスク分析を可能にした
■「個人レベルの学歴」も遺伝子解析で説明できるように
■300万人のサンプルから相関を導き出す
■学歴スコアが高い生徒は、どんな学校にいても優秀
■母親の胎内にいるときから、将来的な学歴が予測できる
生まれた時、いや母親の胎内にいる時に、遺伝子検査を行うことで、将来的な学歴についてもある程度わかるようになってきている――。
もちろん環境の影響も50パーセントはあり、関連のあるSNPや遺伝子がすべてわかっても、双生児研究で見出された遺伝率50パーセントを超えるわけではないのですから、遺伝子検査だけで子どもの将来が確実にわかるわけではありません。それでもその人の大学進学の潜在能力のセットポイントは具体的に数値化され、難関大学に行ける可能性が高いか低いかについては、一昔前の天気予報程度、いまの地震の予測確率以上には当たるようになってくるでしょう。
最近は遺伝子検査ビジネスが盛んになってきています。現在のところ、病気のリスクについて説明するものが中心ですが、実は説明力が最も大きいのは病気のリスクよりもこの学歴、あるいはそこから示唆される知能なのです。
■あらゆる分野のスコアを算出することが可能
それは分析されたDNAサンプルの数が、特定の病気を持っている人の数より、学歴と収入や職業の情報を提供してくれた人の数の方が圧倒的に多いからにすぎません。理論的には学歴のみならず、知能をはじめ、パーソナリティ、スポーツ、芸術など、あらゆる分野についてポリジェニックスコアを算出することが可能です。
それを測定する方法と、その測定値といっしょにDNAサンプルを数多く(数百万人あるいはそれ以上)提供してもらえるシステムを作りさえすれば。しかし、あなたはそのようなシステムができることを望みますか?
https://news.yahoo.co.jp/articles/b8420dcfebe4237820066d5905f323a2f76f83d4