
事件を起こしたのは当時22歳の小島一朗。同月9日の夜、新横浜から小田原間を走行中の新大阪行き『のぞみ265号』の12号車で、両隣に座っていた女性2人に対し、手に持ったナタで頭や首を切りつけたうえ、止めに入った兵庫県尼崎市の会社員(38=当時)をナタやナイフで切りつけて殺害した。
横浜地裁小田原支部は翌年12月、小島に無期懲役の判決を言い渡しており(求刑・同)、現在彼は受刑者となっている。 公判では「刑務所に行きたい、それも“無期懲役囚”になりたい」という自身の希望を縷々述べた。
「一生刑務所に入るような犯罪を起こそう」と思い立ち、事件を起こしたというのだ。“希望通り”の結果となったためか、判決言い渡し後の法廷で小島受刑者は万歳三唱した。
その小島受刑者(以下、小島)にコンタクトを取ったのが写真家でノンフィクションライターのインベカヲリ★氏。公判傍聴や面会文通、家族への取材を重ね、今年9月に『家族不適応殺 新幹線無差別殺傷犯、小島一朗の実像』を上梓した。
インベ氏が見た小島の実像とは、いかなるものか。上記記事の取材のため、横浜地裁小田原支部で彼の公判を傍聴した筆者が、10月5日、梅田ラテラルにて行われたトークライブでインベ氏に聞いた。
◆事件を起こした本当の理由とは… 「無期懲役囚として刑務所で暮らしたい」という“願望”が事件を起こした動機だったと小島は公判で語っていた。だが、なぜ「刑務所で暮らしたい」と思ったのか。インベ氏は小島との面会や文通などでこれを紐解き、ひとつの結論に辿り着いた。そこに至るまでのアプローチは“写真家”として被写体に迫る作業と同じだったという。
「多くの記者からの取材を受けているような相手だと、取材を受けることで当人の意識も変わっていき、そこに潜り込むことはできない。ですが、本当に誰も手をつけてない相手に、フラッと私が面会に行って、会話できる相手だったら、聞き出せるんじゃないか、それを一回試してみたいという思いはありました。 というのも、私は普段は写真家として一般の女性の話を聞くということを、20年ぐらいやっています。その中で、相手自身が、話をしているうちに本心に気づく、みたいなことがよくある。『表向きの理由』の、もっと深いところの『本当の理由』というものがあって、そこを掘り下げてみると、その人だけが見えている世界観にふっと触れられる、みたいな感覚を覚える、そんな経験をしてきました。犯罪者に対しても同じことをやったら、見えるものがあるんじゃないかと思ったんですね」(インベ氏・以下同)
写真を撮る時と同じように、小島から話を聞き続けること3年。インベ氏が触れた、小島の『事件を起こした本当の理由』は、彼が“実際の家族”にではなく、“国家”に家庭を求めたから、というものだった。
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