
宇宙開発の歴史のなかで長年、見落とされてきた重要な問題がある。「人類は宇宙空間でどうやって恋愛やセックスをするのか」ということだ。
世界各国の宇宙機関が火星や月の長期有人探査に意欲を見せるいま、心理学者とAI(人工知能)研究者がこの問題を真面目に考察した。
宇宙探査や他の惑星への入植という人類最大の事業を実現するには、克服すべき課題がいくつもある。宇宙での恋愛とセックスもそのひとつだろう。
厳しい訓練を重ねた宇宙飛行士も人間であることに変わりはない。彼らにも「欲望」はある。
宇宙探査と惑星への入植を成功させるには、性的欲求を含めた人間のあらゆるニーズを考慮すべきだ。
型にはまった道徳観ではなく、科学に基づく具体的で現実的な解決方法を提示する必要がある。
閉鎖空間に長期間、滞在する少人数のグループはうまくやっていけるのか?
限られた人間関係のなかで、愛情や性的欲望が十分に満たされなくても耐えられるのか?
こういった問題は、セックス・テクノロジーが解決してくれるかもしれない。
心理学、そしてAI(人工知能)の研究者として、人間とマシンのエロティックな触れ合いの意味と、それが人間の幸福感に与える影響にはおおいに興味があるのだが、その技術は地球から遠く離れた場所でも利用できるのだろうか。
宇宙ミッション中のセックスは一度もない
宇宙での性の営みに関して素朴な疑問を持つ人は多いだろう。
人間は宇宙でどうやってセックスするのか? 地球外で子孫を増やせるのか? 宇宙船や惑星のコロニーでの恋愛のあり方は、どんなものになるのだろう?
現時点でNASAをはじめとする各国の宇宙機関は、ミッション中に性行為が行われたことは一度もないと表明している。
宇宙空間でのセックスそのものがなかったのか、それとも誰もそのことを話さないだけなのか、真相はわからない。だが、いずれにせよ月や火星への長期ミッションの実現は近いと言われている。
宇宙探査や、月・火星での入植地の建設などに関われば、乗組員は恋愛、もしくは性的な関係を誰かと持つ機会を長期間にわたって制限される。
ごく近い将来、有人のミッションは乗組員も少なくなり、コロニーも小型化するだろう。人が少なくなればそれだけ出会いも減る。
性格や性的指向の合致するパートナーが見つからず、孤独や欲求不満に陥れば、乗組員同士の関係が悪化するかもしれない。
また、メンバーの誰かと関係が破綻した場合も、引き続き同じ宇宙船で顔を合わさざるを得ない。そうなれば、危険な環境で生存するために必須の良好なチームワークにヒビが入るかもしれない。
完全な禁欲に耐えられる人もいないわけではないが、そうでない人は宇宙で肉体的にも精神的にもまいってしまうだろう。
だがNASAは、宇宙空間における性愛の問題に取り組むことについては及び腰のようだ。2008年、ジョンソン宇宙センターの広報官ビル・ジェフスは次のように述べている。
「NASAが宇宙における性的欲求に関する研究をおこなう予定はないし、それに関連する現在進行中の研究もありません。それが知りたいのなら、お話しすることは何もありません」
だが、このもの言いは無責任だろう。これでは、宇宙空間における人間の健全な性的欲求の解消および幸福に関する基礎研究が、いつまでたっても始まらない。
たとえば、無重力状態で人間がセックスした場合、衛生面やその他の問題についてはどう対処するのか?
エロティックな刺激や愛情に欠けた状態に長期間耐えることになった場合、乗組員のメンタルヘルスをどのようにケアすればよいのか?
これらの合理的な解決策は、禁欲の強制しかないのだろうか?
解決策のひとつとして私たちが提案するのが、乗組員やコロニーの入植者にセックス・テクノロジーを提供することだ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c311d04d2bbe301316c9ddc1bac3f15add004f48