
テロ準備罪成立 凶行を未然に防ぐ努力続けよ
◆共謀罪とは別の物だ
過去に3度廃案になった「共謀罪」法案では、対象の団体が組織的犯罪集団に限定されず、
適用には実行準備行為も必要とされなかった。テロ等準備罪が共謀罪とは別物であること
は明らかだ。
制約が多すぎて、テロ等準備罪を効果的に運用できるのか、という懸念さえ生じる。
政府は国会審議で、組織的犯罪集団と関係のない一般人は対象外だ、と繰り返し説明した。
一時的に集まった犯罪者グループは該当しない、との見解も示した。
野党が質問した「米軍基地反対の運動家」などが対象外であることは言うまでもない。
集団の周辺者の例として、暴力団と地上げを行う不動産会社社長を挙げた。277の対象犯罪
を選んだ理由も具体的に示した。
こうした説明により、摘発対象が明確になったのではないか。「一般人も処罰される」という野党
の主張は、不安を煽あおるだけだったと言わざるを得ない。
野党は「監視社会になる」とも批判した。改正法はあくまで、犯罪の成立要件や刑罰を定めた実
体法だ。捜査手続きは従来の刑事訴訟法に基づいて行われる。警察が新たな捜査手段を手に
するわけではない。批判は的外れだ。
警察には今後、一層の情報収集力が求められる。供述を引き出す能力も問われる。テロ等準備
罪への疑念を軽減するためにも、法に基づいて、適正に捜査する姿勢に徹することが肝要だ。
無論、改正法により、テロを完全に防げるわけではない。特定の集団に加わらずに自爆テロなど
を起こす「ローンウルフ」型の犯罪には対処が難しい。
あらゆる事態を想定し、法の穴を埋めていかねばならない。
残念だったのは、国会が混乱したことだ。民進、共産など野党が金田法相の問責決議案、内閣
不信任決議案などを次々と提出したことで、改正法の参院本会議の採決が翌日朝にずれ込んだ。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20170615-OYT1T50139.html?from=ytop_ylist