EV普及のカギ握る充電設備、新設の動き鈍く…マンションは居住者の合意形成ネックに
2022/08/01 05:00
ガソリンを使わず、走行中に二酸化炭素を出さない電気自動車(EV)。普及のカギを握るのは、自宅など身近な場所で充電できる環境の整備だ。しかし、多くの利用が見込めるマンションなどでは居住者の合意形成がネックとなり、新設の動きは鈍い。(浜田喜将、中川慎之介)
東京都千代田区の広告制作会社社長、藤井孝夫さん(74)は週2~3回、自宅マンションで愛車のEVを充電する。
充電は簡単だ。来客用駐車場にある充電設備のケーブルを車の充電口につなぎ、スマートフォンの専用アプリで充電時間を設定するだけ。フル充電には最大8時間ほどかかるが、「寝ている間に充電されるので、ありがたい」と藤井さん。月約1万円の利用料はクレジットカードで支払う。
藤井さんは、約60戸の区分所有者でつくるマンション管理組合に掛け合い、2019年9月に1基を新設。導入を請け負った充電設備会社「ユアスタンド」(横浜市)によると、購入・設置にかかった整備費約200万円のうち、約170万円は国や都の補助金などで賄い、組合の負担は約30万円で済んだ。また、利用料の一部を整備費用の回収に充てる仕組みにしたことで、EVを持たない居住者の理解を得られたという。
政府は35年までに、国内で販売されるすべての新車をEVなどの電動車にする方針だ。これに伴い、マンションや商業施設などに計15万基の充電設備を整備する目標を掲げ、補助制度を設けているが、新設数は伸びない。
一般社団法人・次世代自動車振興センターによると、補助金の交付件数は16年度に4973件を数えたが、その後は右肩下がり。21年度は764件と増加に転じたが、センターの担当者は「マンションなど集合住宅での普及は引き続き課題となっている」と指摘する。
同センターが17年に約30のマンション管理組合を対象に行ったアンケートでは、設置の課題として「費用についての区分所有者の合意形成が難しい」との回答が93%に上った。設置場所を巡る合意形成を課題に挙げた回答も38%あった。
自宅で充電できないEV所有者は、ディーラーや商業施設などに行って充電する必要があり、「充電難民」とも呼ばれる。東京都港区の会社員男性(36)は昨年、自宅マンションの管理組合に導入を要望したが認められず、片道20分かけて充電場所に通う。「今後、EVが普及すれば、充電場所が混雑してさらに時間がかかるのでは」と懸念する。
国が補助増、都は義務化検討
充電設備の普及に向け、様々なてこ入れが図られている。
経済産業省は今年から、一般向け充電設備の購入費の補助額を従来の最大30万円から同35万円に引き上げている。同省の担当者は「マンションへの設置で障壁となる費用負担を減らすことが最も大事」と話す。
同センターは7月、設置の妨げになる煩雑な手続きをわかりやすく解説しようと、集合住宅への設置を検討する人に向けたウェブサイトを開設。公的補助の種類や金額、設置までの一般的な流れ、設置を請け負う事業者の一覧などを掲載している。東京都は、新築の戸建て住宅やマンションに設置を義務づける条例の制定を検討している。
自動車ジャーナリストの 御堀みほり 直嗣さんは、「身近な場所で充電できなければ、EV購入の動きは広がらない。国はEV普及の重要性を積極的に発信するとともに、充電設備の設置を加速させる仕組みづくりを考えなければならない」と話す。
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このマンションでこのおっさん以外利用してる人いんのかな
ガソリングルメ禁止にするだけじゃん
移って下さいって言うなら逆らうだけだし違法にしたら移らざるを得ないだろ