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[東京 1日] - 日本時間4月29日早朝の北朝鮮ミサイル発射に対するトランプ米大統領の反応は早かった。失敗の報道から数時間後にはツイッター上で、「北朝鮮は今日、不成功だったとはいえミサイルを発射し、中国と、高く尊敬されている(習近平)国家主席の願いを踏みにじった。悪いことだ!」と北朝鮮の行動を強く非難した。
トランプ政権は26日に、上院議員100人全員をホワイトハウスに招き、北朝鮮問題への対応方針に関する異例の説明会を開催していた。そのたった3日後、まるで米国の空母を威嚇するかのような北朝鮮のミサイル発射に、トランプ大統領も腹立たしい思いだったに違いない。
ミサイル発射が報じられた29日早朝、日本では北陸新幹線や東京メトロ全線など一部の鉄道が、安全確認のために約10分間運転を見合わせた。ニュースでも北朝鮮問題が連日報道されるなど、緊張感は高まっている。
一方、金融市場に目をやると、こうした日本での緊張感とは裏腹に、別名「恐怖指数」ともいわれるVIX指数は、10.8と低水準で推移している。VIX指数は通常、10―20の間で推移する。20を超えると総悲観、すなわちリスクオフの環境と判断されるが、レンジの下限である現在はむしろリスクオンの状態と言える。
同指数は4月23日のフランス大統領選挙の第1回投票前に15付近まで上昇する場面もみられたが、選挙の無難な結果を好感し反落した。足元、金融市場では第1回投票結果に対する安心感が広がっており、北朝鮮問題は差し当たって喫緊のリスクとは捉えられていないようだ。
確かにトランプ大統領が北朝鮮問題を「最重要課題」と位置付けているため、米国でも北朝鮮に関するメディア報道は増えているが、しょせん彼らにとっては遠いアジアの出来事でしかない。米国民の関心も低いだけに、米株価に与える影響も軽微であり、米S&P500指数のオプションのボラティリティーをベースに算出されるVIX指数の反応が鈍いのもうなずける。
また、米国民の関心が高くない中で先制攻撃を仕掛け、米国が反撃を受けるなどの事態に転じた場合、トランプ政権にとってかえって支持率低下を招くなどのリスクがある。一部報道にみられるように、極右派のバノン氏やナバロ氏の政権内での影響力が低下し、現実路線の共和党議員や経済閣僚の影響力が高まっており、トランプ大統領が極端な行動に走る可能性は低下している。こうした理由から、米国が先制攻撃を仕掛ける可能性は極めて低いとみられる。
米政府は当面、中国に協力させる形で北朝鮮に対する制裁を強めるなど外交を軸とした対応をとるだろう。北朝鮮も、金正恩第1書記の行動が読めないというリスクは常にあるものの、米韓による反撃の脅威を考慮すれば、先に攻撃を仕掛ける可能性は低いとの見方が優勢だ。
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尾河眞樹
ソニーフィナンシャルホールディングス 執行役員・金融市場調査部長
2017年 5月 1日 4:05 PM JST